年金分割とは
【目次】
● 年金分割とは
● 年金分割を利用出来る人
離婚時における年金分割は大切な手続きとなりますが、
馴染みのある制度ではないので、難しいと感じるご依頼者様が多いです。
(※ 当事務所では離婚公正証書、離婚協議書の作成を行っています。)
年金分割という制度を簡単に説明すると、
離婚に伴って、婚姻期間中に納付した厚生年金を譲る(分割)ものです。
尚、平成27年10月から共済年金は厚生年金に統一されたので、
今回説明する内容については、厚生年金と共済年金は同じと理解して下さい。
極端な例を使って年金分割の制度をお伝えします。
【離婚時の状況】
◇ 夫は会社員
◇ 妻は専業主婦
◇ 婚姻期間は20年
先ず夫は会社員なので、給与明細書を見れば分かりますが、
社会保険料(厚生年金保険料)という項目があり、毎月天引きされています。
一般的に年金制度は2階建てと言われており、
1階に該当するのが国民年金、2階に該当するのが厚生年金です。
(注 自営業者は国民年金のみ納付しているので、例外となります。)
つまり会社員の夫は国民年金と厚生年金の保険料を払っています。
ちなみに夫が会社員である専業主婦は第3号被保険者と呼ばれ、
毎月保険料を納付しなくても、国民年金を納めたという扱いを受けます。
(※ 妻が会社員で夫が専業主夫でも同じ扱いを受けます。)
【受給出来る年金】
◇ 夫は国民年金と厚生年金を受給
◇ 妻は国民年金だけ受給
将来、年金を受給出来る年齢に到達した時に、
国からもらえるお金は妻(国民)より夫(国民+厚生)が多くなります。
つまり夫は厚生年金という上乗せがあるので、妻より多くもらえます。
婚姻生活が続く場合、夫婦の財布は1つなので問題ありませんが、
離婚すると財布は別々になるので、受給額が少ない妻の生活に影響が出ます。
(※ 離婚に伴い他人(別居)になるので、当然に財布も別々になります。)
妻「私が支えていたから、夫は仕事に集中出来たのに。」
夫が仕事を頑張れた要因の一つに、内助の功があったのは明らかで、
妻がこのような不満を抱えるのは当然であり、理解することも出来ます。
この妻が抱える不満(不公平感)を解消するために生まれたものが、
夫が納付してきた厚生年金の一部を妻に譲る(分割)という、年金分割制度です。
つまり年金分割の手続きをすると、妻も厚生年金を納付したと扱われます。
ちなみに年金分割の手続きには性別を問わないので、
仮に専業主夫(妻が会社員)であっても、この制度を利用することが出来ます。
年金分割の必要書類や割合については、以下の関連ページをご覧下さい。
【年金分割の関連ページ】
◇ 年金分割の3号分割を知りたい
◇ 年金分割の合意分割を知りたい
◇ 年金分割の情報通知書を知りたい
◇ 共働き夫婦の年金分割を知りたい
◇ 年金分割合意書の書式と文例
年金分割を利用出来る人
離婚時における年金分割という制度については、
全ての夫婦が利用出来る訳ではなく、利用条件があります。
上述の通り、婚姻期間中に納付した厚生年金を譲る(分割)ものであり、
国民年金しか納付していなかった夫婦については、利用することが出来ません。
つまりこの利用条件をクリアした夫婦だけが年金分割の手続きが出来ます。
【利用条件のポイント】
◇ 厚生年金を納付していた
◇ 婚姻期間中の働き方で判断する
先ず厚生年金を納付するのは会社員(公務員)だけなので、
給与明細書を確認すれば、この条件を満たしているか判断出来ます。
一方、自営業者は国民年金のみを納付することになり、
厚生年金は納めていないので、年金分割の手続きを利用出来ません。
つまり自営業者の夫婦は年金分割の話し合いは不要となります。
少しややこしいですが、自営業者の配偶者が会社員だった場合は、
配偶者が厚生年金を納付しているので、年金分割の手続きは出来ます。
Q「会社勤めを経て自営業者になった場合はどうなりますか?」
年金分割は婚姻期間中に納付した厚生年金を譲るものなので、
このように一部の期間でも納めていれば、その期間は手続きが出来ます。
つまり会社員時代に納付した厚生年金について、年金分割を行います。
【年金分割を考えたら】
◇ 平成20年4月に㈱○○に入社
◇ 平成22年5月に結婚
◇ 平成25年4月に㈱□□に転職
◇ 平成30年4月に個人事業主として開業
年金分割の手続きを考えたら、婚姻からの職歴表を作り、
夫婦が制度を利用出来るかについて、確認することから始めて下さい。
夫婦間の働き方によっては、妻から夫に譲るケースもあるので、
職歴表を作る時は、自分だけではなく配偶者のものも作るようにして下さい。
当事務所ではこの職歴表を確認することが出来れば、
年金分割制度の利用可否について、直ぐにお伝えすることが可能です。
(※ 年金事務所に相談しても問題はありません。)